一般社団法人
日本ベリーダンス連盟

コラム
2024.8.5

アラフィフ親父、
単身エジプト×エンタメの最前線へ!

ムハンマド上田トム

https://www.instagram.com/tablakwaiesa/

 

ベリーダンサーにもおなじみ!エジプトのシャービー歌手「サード エルソガイヤル」のバンドに日本人男性が!? エジプト・カイロで、持ち前の芸人魂と不屈の生命力で年間約1000ステージを経験した上田さんに、現地のミュージシャン事情を教えてもらいました!

 

●ラマダンが明けるとシーズン到来!

―ミュージシャンの働き方は大きく分けて二つ。
1)座長に雇われてグループに所属
2)フリーランスで複数のバンドを掛け持ち

 

ベリーダンスでいえば、ディーナやソライヤといったダンサーが率いる専属バンドに所属する場合は1)、フェスティバルの生演奏コンペなどで演奏しているミュージシャンは2)のケースが多いです。

 

―座長=グループのオーナーは、スター歌手やダンサーが務めます。ステージの構成はもちろん、仕事の選定、メンバーの雇用や教育…グループのあらゆることを取り仕切っており、仕事が増えるか稼げるかはすべて座長次第です。

 

ミュージシャンにとっても完全実力勝負の世界なので、失敗したら明日の仕事はなくなるし、逆に所属するグループの仕事が少なければもっと稼げるグループへと移っていくのは当たり前。…とはいえラマダンの一か月間は基本仕事はありませんし、正直ミュージシャンの懐事情はけっして豊かではありません。演奏仕事は深夜なので、昼間の空いている時間はトゥクトゥクやタクシーの運転手、音楽学校の先生、会社の経理など別の仕事をしている人も多かったです。

 

 

●総勢50人!スターがもてなす壮大な結婚パーティー

―サード エルソガイヤルのグループに所属していた時は、お金持ちの結婚式での演奏がメインでした。

 

エジプト人は少なくとも2~3回、多い人だと5回は友達を招いたパーティを行うので、平日でも結婚式があります。場所はホテルやカイロ郊外の軍施設内が多く、お客さんはパーティーの招待客のみ…とはいえサードはエジプト人なら100%知っている国民的スター! 彼の写真を撮ろうと大勢の参列客が押し寄せてくるので、すぐ近くでサガットを演奏しながら大スターのセキュリティー&人員整理も行うのが自分の役割でした。

 

 

―結婚式のステージは1回70分。最初にインストのテーマ曲が演奏され、MCが盛り上げるなかサードが登場して約30曲(!)を披露し、少年のタンヌーラパフォーマンスで終わるのが基本的な流れです。

 

次に何の曲を演奏するかは、何百とあるレパートリーのなかからその場でサードが決めていきます。メンバーは彼が歌うマワール(歌の即興パート)の歌詞を聴いて「次はきっとあの曲だ!」と情報交換しながら演奏を行う…スリル満点のイントロクイズといった感じでした。

 

演目だけでなく、今日どこで何本のステージがあるかも事前に知らされることはありません。サードのグループは50〜60人の大所帯なので、ワゴン車にぎゅうぎゅう詰めになって現場から現場へと移動します。まるで毎日が修学旅行のよう! 日本から来た妙なおっさんが珍しかったのか、僕のジョークがエジプト人のツボにハマったのか…移動中はメンバーからずっといじられているので気が休まる暇がありませんでした。おかげでアラビア語は格段に上達しましたが、体力&精神的にはちょっぴりキツかったですね。

 

 

●チップのお札が舞い散るナイトクラブ

―次に所属した
ハマーダ イッ レーシー(マフムード イッ レーシーの弟)のグループはもう少し小規模&定期的なナイトクラブの仕事が多く、1日の予定がだいたい決まっていました。

 

深夜2時に集合
 ↓
ナイル川に浮かぶ3軒のナイトクラブを回る
 ↓
空き時間に飛び込み仕事
 ↓
翌朝6~7時頃に仕事終了

 

―ナイトクラブでは、1ステージ60分×1日10近いバンドが入れ替わり立ち代わり登場して演奏します。

 

演奏内容は客に合わせて変幻自在!
ハマーダはシャービー歌手ですが、ウンムクルスームからナイトクラブで大人気のカリーギー(湾岸諸国のポップス、ハリージのエジプト方言)まで唄いこなす<モトリブ ハディーダ(鋼鉄の歌手)>。「ワルダ ガザイレイヤの〇〇を」といったように<歌手名>×<曲名>でリクエストされることも多かったです。

 

盛り上がった客は、5ポンド札×2000枚の札束を両替し、フロアにいる歌手やダンサーに向かってばら巻きます。これがカイロのナイトクラブ名物<キート(お札)シャワー>!フロアに山と積まれたお札は、通称「お札ボーイズ」5~6人がブルドーザーのようにかき集めて大きな布製のゴミ袋に入れて回収され、次のチップの札束へと再利用される仕組みができています。 

 

 

―いまカイロではギザ市側の風光明媚なコルニーシュ通り沿いのアグーザ区、インバーバ区、ギザの大動脈ガーマッテッドール通り沿いのモハンデシーン区あたりのナイトクラブが賑わっています。逆にかつて不夜城と呼ばれたピラミッド通りのナイトクラブの多くは、モールなどに建て替わってしまいました。

 

●7年ぶりに都民に戻りました!

―昨年本格帰国した後は、日本とエジプトを行き来しながら<タブラクワイエサ>の定期ライブや太鼓やサガットのレッスン、小学生への特別授業…自分が経験した新鮮な情報やテクニックをさまざまな形でシェアする活動をしています。

 

このまま日本で穏やかに暮らすかもしれないし、毎晩のステージ仕事やストリートの喧騒が恋しくなったらまたエジプトに戻るかもしれないし…この先の予定は決めていません。

 

「一緒に住むのはエジプト人?日本人?」「移動方法を安くあげる!交通情報」「ナイト マナール、死のエレベーター」「カイロで必ず笑いを取る方法」etc. トークメニューは
無限にあるので、ご興味ある方はオシゴトお待ちしております(笑)!

 

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