荒井麻希
動きも音楽も衣装も…ジャンルが異なれば、まったく別のダンスかと思うほど印象が変わるのがベリーダンスの不思議なところ! なぜこんなに<幅>が広いのか?そのなかで<ベリーダンス>としての共通点って? トライバルフュージョンもオリエンタルも自在に踊りこなす荒井麻希 (アライマキ)に、思うところを聞いてみました。
●はじめて観る人を飽きさせない、豊富な演目の数々
―会社帰りに通えるダンスを探して
「裸足 ダンス」
と検索して見つけたのがベリーダンス。
オリエンタルを学ぶなかでロマやフォークロアを知り、合わせてトライバルフュージョンならではのクールな表現にも惹かれて、定期的にアメリカで行われるフェスティバルやインテンシブコースへ通うようになりました。
自分のなかではジャンルという意識はなく、どれも<ベリーダンス>。
オリエンタルもトライバルフュージョンも、音楽や衣装で多少色付けはしているものの、自分の<感性>に響いた部分を<フィジカルな動き>で表現するという根っこの部分に変わりはありません。
企業パーティーやイベント、他ダンスとのコラボ企画など、ベリーダンスをはじめて観る方々の前で踊る機会も多いのですが、メジャンセからスタート→後半はフュージョンスタイルでがらっと雰囲気を変えると「ベリーダンスってこんなにたくさんの踊りがあるんですね」ととても喜ばれます。定期開催しているディスコイベントでは、アートやエンターテイメントに精通したお客さまから嬉しい感想をいただけることも多く、ベリーダンスを世間に届ける上で、演目の<幅広さ>は大きな武器になると感じています。
●今も昔も!自分らしい表現に貪欲なダンサーたち
―ベリーダンスは遊び心に富んだ踊り。
以前、モハメド・シャヒーンの
ワークショップに参加したとき、
「この曲はバラディとして踊ってもいいし、シャービーとして踊っても◎! 衣装も何でもOK」という言葉に、とても感激しました。
パフォーマンスする側はもちろん、
観る側もこれまでと何かしら「違う」表現に接したとき、頭ごなしに否定したりせずに「なるほどそうくるか」「面白い!」と受け入れる風土がある。この寛容さ、懐の深さがダンサーの自分らしい表現や柔軟な発想の支えとなり、ベリーダンスの幅広い表現に繋がっているように思います。
―私が強く印象に残っているのは、
エジプトのフェスティバルで<剣>を豪快に振り回して踊っていたアスマハーン。剣はアメリカンキャバレースタイルの代表的アイテムなのでいわば「逆輸入」…そんな予想外の演出に会場はたいへん盛り上がりました!
―2023年訪れたアメリカでは、
フュージョンベリーダンス界の大スター、ゾーイ・ジェイクスがオリエンタル衣装で踊るドラムソロに観客は拍手喝采! トライバルの動きを取り入れつつ、オリエンタルらしい柔らかい表現もまじえていてとても素敵でしたよ。
―そもそも世界ではじめてのフュージョンダンサーは、1960~70年代エジプト黄金期のスターたち! 彼女たちはガワージの女性たちの踊りに、クラシックバレエやブラジルのサンバの要素を取り入れて、<自分らしいスタイル>を作り上げた最初の存在です。
●「…リンボ―ダンス?」とはもう言わせない!
―雑誌やドラマの影響でベリーダンスの認知度は少しずつあがってきたものの、
「ベリーダンス?観たことない」
「棒をくぐる踊り?火を使うの?」
「どこの国のダンス?」
といった方も一般的にはまだまだ多いです。
私はベリーダンスをもっともっとメジャーにしたい!
華やかで楽しくて格好よくて…
こんなさまざまな表情を持つベリーダンスの魅力を自分に投影して伝えるためにも、引き続き幅広い演目をしっかり学び、踊っていきたいと思っています。
…実はエジプトのフォークロアダンスとITS(Improv Team Sync)のレッスンはすごく良く似ているんですよ! 動きや音楽のテイストこそ違えど、「群舞で踊る」「動きを揃える」ためにマフムードレダとエイミーサイジェルが大事にしていることは同じ。そんな発見もまた面白く、学び続ける上でのモチベーションにも繋がっています♪