Bolbol Hossein
至近距離でダンサーの動きや観客との掛け合いを堪能できるレストランショー。2004年の開店時からベリーダンスショーを続けるペルシャ料理レストラン『Bolbol』のオーナーシェフ・Bolbol Hossein (ボルボル・ホセイン)さんに<経営者視点>でのベリーダンスについて伺ったら、ちょっぴり辛口ながらもお客さまの前でベリーダンスを踊る上で大切なお話がたくさん詰まっていました!
●ペルシャとベリーダンスのつながりは<起源前>から
―来日は1990年頃…だったかな。祖国の食文化を日本にも伝えたいと思い、2004年にペルシャ料理のお店を開きました。現在は東京都杉並区高円寺に2店舗を経営しています。
―ペルシャ語でベリーダンスは「ラクス・シャルキ(中東のダンス)」。古代ペルシャ帝国の都・ペルセポリスには、王様を楽しませるため、数多くの踊り子たちが仕えていました。1960~70年代に作られた古い映画には必ずダンサーが踊るシーンが登場し、今もビデオやDVD、Youtubeで観られています。ベリーダンスとペルシャ(イラン)とのつながりはとても古くて深いんですよ。
―お店でベリーダンスショーをはじめたのは、古代の都での王様への<おもてなし>をイメージしてのこと。オープニングパーティーでは、日本在住のレバノン系米国人ダンサー・サディアさんに踊っていただきました。開店を祝いに駆けつけたイラン人の友人たちは、彼女の踊りの上手さにびっくりしていましたね。
基本的にイラン人は踊りが大好き。
家族の集まりなどで誰かが踊り出し次々と踊りの輪が広がっていくような文化があり、子供たちは小さい頃から踊りに親しんで育ちます。生まれたばかりの赤ちゃんがつかまり立ちをすると、周りの大人たちが手拍子をしてはやしたて…私たちの間では「人は歩き出した瞬間から踊りはじめる」と言われているほどです。
ただ1970年代後半のイラン革命以降は、公共の場でのお酒や踊りは一切禁止されてしまいました。日本に滞在している若い留学生たち等は、私の店に来て「はじめて生でベリーダンスを見た!」という人がほとんどなんです。
●ショーが面白いと、客はスプーンを置く!
―開店した当時、ベリーダンスは日本では今ほどなじみがありませんでした。国籍問わず、はじめてベリーダンスを見る人は「楽しくて仕方ない!」といった感じ。ただショーを1~2回と見慣れていくと…お客さまはとても正直なので、<ショーが楽しいか><踊りが上手いか>はすぐに分かります。
まず上手いダンサーは堂々と自信たっぷりに登場し、ダンスのなかに1秒たりとも<空気>が入る余地がありません。するとお客さまはスプーンを置いて「料理が冷めてしまったとしても、今はこのショーを観たい!」とダンスに集中します。
―逆にダンサーがお客さまの圧に呑まれてしまったり、自分のテクニックを披露するばかりであまりショーが面白くなかったりすると、お客さまはすぐ食事に戻り、時には仲間たちと会話をはじめてしまいます。
とくにイラン人のお客さまは
踊りを見る目が肥えていることもあり、
「今日のダンサーはプロフェッショナルではないの?」「努力すれば、私のほうが彼女より上手に踊れるわ」と私に厳しい言葉を伝えてくることもしばしば。
ただお客さまは、大事なお金と時間を費やして<スペシャルな時間>を過ごすためにお店にいらっしゃっています。料理もダンスもサービスも…店が提供する内容がいまいちであれば、もうお店に来なくなってしまう方が大半。不満を伝えてくれるのは、むしろありがたいことだと思うので、ダンサーにもその場で私からフィードバックするようにしています。
●ダンスタイムが盛り上がるかは<最初の3人>次第
―踊りやすいリズムの曲を選んだり、
イラン人のお客さまが多ければ
ペルシャの音楽を入れたり…
慣れているダンサーは、踊りだけでなく選曲やお客さんの見極めも上手いですよ!
―日本人は踊るのを恥ずかしがる人も多いので、
最後のダンスタイムが盛り上がるかは<はじめに誘う3人>選びが重要。
盛り上げ上手なダンサーを見ていると、
たくさんのお客さまのなかから
・踊れそうな人
・踊りたそうな人
・この人が踊ったら場が盛り上がるなという人
etc.を探し、あらかじめ踊りながら<合図>を送っているように思います。
するといざ誘われてもお客さまはスッと踊りに出てくれるし、そうして3人くらいが踊ってしまえば場の空気ができあがるので、恥ずかしいそぶりを見せていた人たちも踊りの輪に加わりやすく、「ベリーダンス楽しかったね」という印象を残せるんです。
●ドラマ効果ではじめて来店するお客さまが増加中!
―2011年の東日本大震災や昨今のコロナ禍…いろいろありましたが、お店を続けてこられたのはお店に来てくださるお客さまのおかげです。
最近はドラマ『セクシー田中さん』の影響もあり、再びベリーダンスをはじめて観る人が増えてきた印象です。何よりもドラマのなかでたびたび登場したメニュー「フェセンジュン」が大人気! ペルシャ料理は煮込むのに時間もかかるので、仕込みが間に合わないほどなんですよ(笑)。
美味しい料理と楽しいベリーダンスショーでしっかりリピーターを増やしていけるよう、開店20年目以降も頑張ります!