Kagura
お客さんを華やかに魅了する<ベール>は、ベリーダンス初心者にもプロにも身近な小道具の一つ! 今回は和の要素を取り入れた舞台作品においても独自の世界観を次々と創り出すKagura(カグラ)に、変幻自在なベールの扱いやそこに込められた想いについて聞いてみました!
●ひとりでに舞い踊るように…幻想的な舞台空間を創出
―シルクベールにファンベール…
最近ベールはもっぱら舞台用に創作した作品のなかで使っています。
時にやわらかく、
時に強く鋭く。
ベールの素晴らしい点は
「何にでもなれる」ところ。
道具として扱うのではなく、ベールが【ひとりでに舞い踊る】かのような。そんな幻想的な世界を創り出せるところが大好きで、私の舞台創作には欠かせない表現手段のひとつとなっています。
―素材はやはり<シルク>が好きで、
広い舞台空間のなかで豊かにたなびく320cmのロングベールを愛用しています。
ただ一般的なサイズより約50cm長い分、ロングベールは絡まったり床についたりしやすくて。自分の扱いがダイレクトにベールの“なびき”となって現れるので、キレイに魅せるためには身体の使い方に工夫が必要。<肉体の表現>と<道具の表現>を噛み合わせるためには、床をしっかり踏み、そのパワーを指先まで伝え…と身体を<流れ>で使っていくトレーニングが欠かせません。実はファンベールよりロングベールのほうが運動量は多く、ずっとハードなんですよ。
●鼓動、呼吸、声…身体のリズムに同調させて
―個人的な感覚ですが、
心臓の音や呼吸といった私の身体のリズムと相性がいい気がして、シルク素材には<3拍子>の音楽を合わせることが多いです。
お客様までは聴こえてないはずですが、実はステージではメロディを歌いながら踊っていることもあります。声を発したほうが、よりクリアに呼吸を意識できるように思うからです。
バッハのカノン、
映画「ピアノレッスン」の主題歌、
アイリッシュミュージック、
スタジオジブリの楽曲の数々…
そもそも選ぶ音楽は、幼い頃から好きだった曲がほとんど。大人になってから知った音楽も、アカペラで歌えるくらいまで身体の奥底まで染みこんでから振付を作るようにしています。
●表現の解釈は、観客の自由な想像に任せて
―たとえばファンベールにしかできないと思っていたことがベールでできたり、逆もまたしかり。<布><四角>と頭で考えると思考が止まってしまうので、時に無意識に自由に探っていくうちに「出来た!」ということもたくさんあります。
ただ<技>は表現のためのツール。
あくまで作品に必要な手段であり、ゴールではありません。
踊り手としては、
音楽に対して
その時自身が受け取ったものを
純度高くストレートに。
自分の情念や想いは極力載せず、
表現に対する解釈は
すべて受け取り手である<観客>の自由な想像にゆだねています。
―そう考えるようになったのは、
幼い頃から興味のあった
日本の民俗芸能の影響も大きいかもしれませんね。
たとえば<御神楽>では
神事ではありながら
舞い手が持つ紐が
扱う人のやりようによって何にでもみえる瞬間があって…
時に捧げもののように、
時に何かと戦っているように。
解釈は観客にゆだねることで、
<表現>の可能性は
むしろ無限に広がっていくように感じています。
―最近は<染物>や布に絵を描く<シルクペイント>にもチャレンジしています。やっぱり素材から手がけるのは楽しいし、何よりお道具に愛着が沸く♪ ただその一方で、具体的な柄を描いてしまうと、ベールの表現するイメージが固定化されてしまうことにも気付いてしまい…いつか<タイダイ柄>のように、何ものでもないがゆえに何にでもなれる柄を作れないかと試行錯誤中です!