一般社団法人
日本ベリーダンス連盟

コラム
2025.10.27

覚悟、葛藤、気付き…
海外で<和>のフュージョンを踊るということ

Ribo

https://www.instagram.com/ribo_maissa/

 

今回は「ジャパニーズ・オリエンタルフュージョン」を武器にヨーロッパ各地のイベントやフェスで活躍中のRibo (リボ)。和の楽曲やファンベールを使ったりetc.日本では一般のお客さま受けバツグンの和フュージョンも、着物を初めて見る人も多い海外で踊るとなると大きな重圧もあったようで…。

 

 

●南仏/ヨーロッパの<ベリーダンス事情>

―3年前、日本からパートナーの故郷である南仏モンペリエに移住し、ベリーダンサー&インストラクターとして活動しています。

 

地中海に面したモンペリエは、フランスで8番目の人口を抱える中核都市。温暖な気候と豊かな自然を求めて、初夏~秋はヨーロッパ各地からたくさんの観光客が訪れます。また地理的に近いことや歴史的背景もあり、アルジェリアやチュニジア、モロッコといった北アフリカからの移民がとても多い! 街を歩けばコテコテのアラブポップスが聴こえてくるし、ハラルの食材店やアバヤ(アラブ女性の民族衣装)を売る店がたくさん。私はフランス語を学んでいた学生時代もこの街で暮らしていたのですが、当時趣味で習っていたベリーダンスの先生もモロッコ出身の方でした。

 

 

―ヨーロッパ全体でいうと、
ベリーダンスのフェスティバルは各国で開催されていますが、とくにスペインやイタリア、ギリシャ…夏場×地中海沿いのリゾート地で行われるフェスは、バカンスがてら参加する人も多く人気があります。

 

またヨーロッパのフェスでは、しばしば面白いフュージョンに出会るのも楽しみのひとつ。素晴らしいコンテフュージョンやタンヌーラフュージョン、フィンランドチームによる可愛らしいダプケとサウナ(!)のフュージョンetc. 各国が固有の文化を持つおかげで、私の<和ベリー>もオーディエンスの反応は上々! もちろんフェスによって雰囲気はまちまちですが、時にはそれぞれの小道具や衣装、音楽について質問しあったりと、ダンサー同士、自然と交流が生まれるような風通しの良さがあります。

 

 

 

●目標はアーティスト!移住直前に<日本文化>を猛勉強

―日本文化を真剣に学びはじめたのは、移住を決意してからのこと。芸術の国・フランスで<アーティスト>として生き残るためです。

 

私は海外生活が長かったこともあり、英語にフランス語、バレエ、社交ダンス、クラシック音楽…西洋の文化に多く触れて育ちました。幼い頃一緒に暮らした祖母は着物を日常的に着こなすお洒落な人でしたが、「敷居が高い」「凸凹ある体型の私には似合わない」と自分から着物を手に取ることはありませんでした。

 

ただ移住するにあたって、
アートが盛んなこの国では、人と同じことをしていては仕事を得ることはできません。ましてここは本場のアラブ系ダンサーや圧倒的なテクニックを持つ実力者がひしめく南仏。アジア系の身体も小さな私が、何のツテもない状態からくい込むためには、絶対的な「個性」が必要でした。フランスではアニメや漫画、ゲームといった日本のサブカルチャーが人気なことから、「日本人である」ことは大きなアドバンテージになりうると考えたんです。

 

もちろん、それには自身がきちんと日本文化を身に付ける必要があります。そこで移住準備の半年間は<華道>と<神夜舞キモノスタイル>のお稽古に集中して通いました。合わせて国際アラビアンダンス協会のYuumi先生(@yuumi_wabelly)に師事し、すり足や扇子の持ち方といった日舞所作とベリーダンスの基礎を融合させた<和ベリー>をイチから習いました。Yuumi先生には、今も引き続きオンラインレッスンでお世話になっています。

 

 

●二つの文化へ敬意を込めて!日本文化を紹介するイベントでパフォーマンス

―幸運にも、渡仏わずか3か月で
モンペリエで開催されたジャパンコンテンツイベント『Japan Matsuri』で<和ベリー>を披露するチャンスに恵まれました。

 

…実はこの時(2021年)、日本は大規模な海外渡航制限中。日本からゲストを招聘するのは障壁が高かったので、フランス在住の私にお声がかかったんです。

 

イベントの入場者は2日間で3万人強!
コロナ禍という社会情勢があったとはいえ、学びはじめてまだ1年にも満たない自分が、日本の文化を、それもベリーダンスとのフュージョンという形で西洋のオーディエンスへ向けて発信することはとても勇気がいること。その時点で自分が出来うる限りのリスペクトと誠意を込めようと心を決めてパフォーマンスしたところ、自分でも予想してなかったほどの拍手や歓声をいただくことができました。

 

 

―現在は、フランス各地で年10回以上開催されるジャパンコンテンツイベントに定期的に出演しています。

 

私自身は
エジプシャンももちろん踊りますが、
こうした場で披露するのは<和ベリー>。
(フランスでは「ジャパニーズ・オリエンタルフュージョン」という名称を使っています)

 

観客のなかには初めて着物や日本人を見る人がいるかもしれないからこそ、「なんちゃって」や「コスプレ」にはしたくない! そのためにも衣装や小道具の扱いには細心の注意を払っています。

 

 

―具体的には、
衣装は本物の着物をベースに、和裁もできる方に制作をお願いしています。柄は日ごろ着物を着る時と同じように季節や楽曲のテーマに合うものを選び、帯や小物のコーディネートにもこだわります。

 

ベリーダンスの動きを見せるためお腹は出しますが、着物本来の美しさを魅せたいので、大きく動いても襟元が崩れないよう、合わせを深めにしたり胸元にホックを付けたりと細やかな工夫をしていただいています。

 

何よりステージでは、
観客を「日本に連れていく」という気概で臨みます。

 

お客さまから
「背景に桜が見えるようだ」
「日本に行ってみたい」
と感想をいただいた時は本当に嬉しかったですね。

 

 

●蘇った遠い記憶…<和ベリー>を通して気付いたこと

―こうしたジャパンコンテンツイベントには、日本から著名な日本舞踊や着物界の先生方もゲストとして招かれます。伝統芸能の専門家から見て、私のパフォーマンスは「文化的に相応しいのか」「ニュアンスは合っているのだろうか」という不安は常にありました。

 

でも同時に踊っている時の
ふとした瞬間に
自分が<日本人>であることを意識することも多くあります。

 

例えば
昔お祭りで踊っていたお囃子、
着物を着こなす祖母の
エレガントな物腰や所作…

 

そんな幼い頃に経験した和の要素に気付いたら、
以前は少し遠く感じていた日本文化が借り物ではなく「もともと自分に根付いているもの」と感じることができた。するとフュージョンへの迷いも吹っ切れて、確固たる自信をもってパフォーマンスできるようになったんです。

 

 

●海外から日本文化の<本質>を発信したい!

―日本文化は言語化しづらいほど奥の深いもの。それが分かるだけに最初は「日本人だから海外で和コンテンツをやること」が軽率に思えて葛藤もありましたが、今では一周して、それもあながち間違っているとは思いません。

 

今後の目標は、
和の作品を即興で踊れるようになること。
そしていつかはフランスが誇るアート…たとえば美術館やファッションショーといった場でアートパフォーマンスを披露できるようになりたいです。

 

 

―当初は<戦略>として学びはじめた日本文化。
でも真剣に取り組むうちに忙しい社会人生活のなかですっかり忘れていた「季節を楽しむ」感覚や「モノを大事に扱う」「他者を思いやる」ことの大切さを思い出し、それはアーティストとしてはもちろん、生きていく上でも今の私にとって大きな<財産>となっています。

 

海外では日本文化のビジュアルやサブカル的な側面がどうしても強調されがちですが、本当に私が伝えたいのはこうした日本文化が内包する素晴らしさ! そのためにも引き続き日本文化へのリスペクトと理解を深め、妥協しないパフォーマンスを追求していきたいと考えています。

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