飴谷圭介
https://www.facebook.com/keisuke.ametani
ダンサーの世界観を視覚的に演出し、観客をステージの魔法に誘う<照明>。でも専門の職人的な世界ゆえ、アイディアをいつどんな風に伝えたらいいのか苦手意識を持っているダンサーも意外と多いようで…。そこでベリーダンサーとの共演経験も豊富な「音屋飴谷」代表・飴谷 圭介(アメタニ ケイスケ)さんに、<照明>をリクエストする際のポイントを教えてもらいました。
●手軽に舞台環境を経験できる「ステージ付きレストラン」
―<照明><舞台監督><音響>として、現在はフラメンコやベリーダンスのステージを広く裏から支える仕事をしています。
僕はもともとフラメンコライブが売りのレストランの<ホール担当>。働きながらステージを目にするなかで、ダンサーやミュージシャンのポテンシャルを引き出すにはさらなる設備投資が必要と感じ、自腹で照明や音響機材を購入したのがこの世界に入ったきっかけです。
―ステージ付きのレストランでは、照明は<店内に設置された機材>で行うのが基本。つまり<店選び>の段階で、どんな機材がありどんな演出ができるかを把握しておくことが大切です。また店にスポットライトがある場合も「スポットでダンサーを追う」等の演出は+αの人材を確保する必要があることもあるので、事前にきちんと確認しておくとよいと思います。
●写真や手書きイラスト…照明プランは具体的に◎
―逆にホールのショーでは、
希望する演出に合わせて必要な<機材>や<人材>を準備することができます。ただし予算面に関わることもあるので、なるべく具体的に「どんな演出をしたいか」を事前に伝えていただくことが重要になってきます。
ーステージ照明は一般に
<4つの工程>を経て本番の形へと仕上げていきます。
1)照明プラン提出
:機材や人材の手配、照明ソフトのプログラミング
↓
2)場当たり:照明位置の確認
↓
3)ゲネプロ(通しリハーサル)
:あらかじめプログラミングした内容の修正
↓
4)本番
―1)照明プラン提出は
通常ショーの数週間前、
主催者経由で<照明プラン>のヒアリングがあるかと思います。
各照明担当者の好みや仕事の仕方にもよるかとは思いますが…
個人的には、
秒単位の細かい指示ではなく、
1曲のなかで
●冒頭
●ラスト
●とくに気持ちが入る場所
の3~4カ所に絞って
リクエストを具体的にお伝えいただき、
それ以外の繋がりの部分は<おまかせ>いただいたほうが、全体通してバランスの取れた照明を作りやすいですね。
リクエスト部分は、SNSで見つけたステージ写真や手書きのイラストなどを使って具体的に伝えることをおすすめします。「~なコンセプトで」といったような言葉だと、自分のイメージと実際の仕上がりが一致するかは照明さんとの相性(=運)次第。それよりはビジュアルで明確に指示いただくほうが、イメージがズレるリスクはグッと減ると思います。
●他の人の<場当たり>こそしっかり見学!
-ベリーダンスのステージでは、
2)場当たり
3)ゲネプロ
は本番当日に行うことがほとんど。これは一般的なステージ制作と比べると、かなりタイトなスケジュールになります。
もうひとつ、
<上><サイド><前ツラ/どこまで前に出られるか>といった照明位置は、たとえ同じ会場であってもその日の機材の仕込み方によって変わります。またこれらは本番中は一切変更できません。
-それを確認するのが2)の場当たり。
とくに<上>からのスポットライト(専門用語で「トップサス」)をリクエストした場合は、ライトが当たる位置を事前に確認しておくと、本番で光を外したり顔が影になったりするのを防げます。
もし場当たりの時間が十分に取れないようであれば、他の人の場当たりを見学して、照明がキレイに当たるベストな位置をチェックしておくのも有効。可能であれば、舞台監督さんにお願いして、ステージ上に立ち位置の印(専門用語で「場ミリ」)をつけてもらうとより確実だと思います。
●ゲネプロの照明≠本番の仕上がり
-照明はあらかじめプログラミングしておくこともできるのですが、<即興>で踊るダンサーも多いベリーダンスのステージでは、大枠だけ事前にプログラミングしておき、細かい部分はゲネプロで実際にダンサーが踊るのを見ながら調整していくことがほとんどです。
ーつまり、ゲネプロでの照明は<準備途中>のもの。
本番までの間にさらに変更や調整が加わることも多いので、ゲネで照明のタイミングが合わなかったりイメージと少し違っていたとしても、本番ではきっちり仕上げますのでご安心くださいね。
ダンサーさん目線でいうと、
衣装を着て<本気>でステージで踊ったとき、場当たりで確認した「キレイにライトが当たる位置」に入れるかをゲネプロでは確認するのがいいのかなと思います。
●「ステージ作品を作る」という気持ちに応えたい!
-レストランから独立した今も機材環境には力を入れていて、たくさんステージ仕事をいただいた分はそのまま新しい機材に投資しています。
自前で最新の優れた機材があれば、
ショーの主催者は限られた予算内で機材レンタルにかかる経費を別のところにまわせます。何なら通常ステージは<舞台監督・照明・音響>の3つの業者に頼むべきところ、僕がすべてワンオペで取り仕切ることも可能になるからです。
そうすることで「発表会をやりたい」「舞台にチャレンジしたい」「いい作品を作りたい」etc.僕のところに仕事を依頼してくれる方々の気持ちに応えられたら何より嬉しいですね!