RHIA
ベリーダンスならではの表現って?他の踊りとの違いって何だろう? 2013年のTIBC(東京国際ベリーダンスコンペティション)優勝以降、数々のコンペで入賞を果たしてきたRHIA(リア)。ここ最近「踊り方が別人のように変わった」と噂の彼女に心境の変化を尋ねたら、<ベリーダンスらしさ>のヒントが見えてきました!
●「あなたは戦っている」と審査員に指摘され…
―たしかに10年前よりはだいぶ落ち着いて大人になったかなと(笑)。
NYから帰国して自身のスタジオを開いたものの日本のベリーダンス業界には知っている人はほとんどいなかったし、TIBC優勝後すぐに妊娠が分かりひどいつわりに悩まされました。出産後もすぐに身体は戻らず…当時は音楽や踊りを愛する気持ちよりも、不安や焦りのほうが断然強かったのだと思います。
ブランクから復帰した後は、ゼロからやり直すつもりでNYのコンペに挑戦!
しかし審査員からは
「あなたは戦っている!」と。
この言葉が突き刺さり、私はステージ上では号泣してしまいました。
ダンスと育児の両立、一人で頑張らねばという孤独感、将来への不安…ベリーダンスを辞めようとさえ思いつめていた時に、思いきってプライベートレッスンをお願いしたのが松屋伊那子(まつやいなこ)先生。ついつい仕事第一で突っ走りがちな私に「お子さんやご家族を大切にね」といつも家族のことまで気にかけてくださる先生は、今では何でも相談できる<第二の母>のような存在です。
●クラシックソングを学び、<音>への考えが変わった
-私はNYでベリーダンスと出会い、魅せ方や登場の仕方、演出etc.…「どうしたら人の目をひくか?」「もっとクリエイティブに!人と違うことを!」と常に切磋琢磨する文化のなか育ちました。大学時代に打ち込んでいたHIPHOPも<技を魅せていく>ダンス。当然ながらベリーダンスの振付も「この音を使おう」「ここにあのテクニックを入れ込もう」と意識しながら作っていました。
―でもいなこ先生によると、
私の振付は
クラシックなベリーダンス音楽とは「何だか合っていない」ようで…。
当時は音楽に関する知識もほとんどなかったので、まずはコンペ課題曲=ベリーダンスでよく踊られるクラシックソング20曲の振付作りを通して、先生の言う<音>を勉強してみることにしました。
次第に理解できるようになってきたのは、アラブの人々にとって音楽や踊りは生活に根付いた<文化>であること。そしてそうしたカルチャーのなかで<音>は意識してとるものではなく、細かく変化しながら日常生活のなかに存在している、ということ。
人間って自分の鼓動を感じることはあっても、歩いたり呼吸したりしながらわざわざ手や足でビートを表現したりしませんよね。
ベリーダンスを踊るときも同じで、音を捉えたり超えようと自分で頑張る必要はない。ただ音に共感しながら<従う>だけでいいのだと分かったら、踊っていてもふっと肩の力が抜けたのを覚えています。
●時にはしゃぎすぎたりもあるけれど…自分自身に正直に!
-最後のコンペ挑戦は2019年マイアミ。
Wardaのクラシックソングを踊って準優勝することができたのですが、コンペの後、審査員の先生からさらなるハッパをかけられても以前のようにメラメラと闘志が燃えてこなかった。この時、自分のなかにあった「本当は戦うのが苦手」いう気持ちに気付いて以来、すっぱりとコンペは卒業しました!
現在はダンサーとして踊ったり、レッスンで生徒さんを指導したりしながら、引き続き<音>を聴き、観客の皆さんへと届ける練習を続けています。
ショーでも「音楽のなかに佇むように」と常に意識してはいますが…はじめてベリーダンスを観る方も多いレストランでは、NY時代の血が騒ぐのか、ついつい張りきってサービス精神を発揮してしまうことも(笑)。
―今の自分は10年前と同じではないけれど、自分のなかにはあの頃の自分も息づいているのはたしかなこと。何よりもいま目の前にいるお客さまに楽しんでいただきたいという気持ちを大事にしながら、これからも音楽に自分に正直に踊っていきたいと思っています。