TINA JAME
今回は先日念願の日本国籍を取得したTINA JAME(ティナ ジャメ)。まるで物語から抜け出してきたかのようなエキゾチックな容姿の裏側には、日頃私たちが知りえない<国籍の壁>もあったようで…。合わせて自身が考える「ダンサー」としての信念を貫く彼女の強さとベリーダンスに向けた切なる想いに迫りました!

●2025年5月、念願の「日本人」になりました!
―私の両親はイラン人。
私自身は日本生まれ日本育ちですが、
家族の影響で、幼い頃から踊りと音楽はいつも身近にありました。
ベリーダンスをはじめたのは高校生の時です。関東にある様々なベリーダンススタジオの体験レッスンに行きましたが、いまひとつピンとくるところがなくて…。やむなく独学=好きなダンサーが生演奏で踊るYoutubeやDVDのあらゆる映像を貪るように見てはひたすら真似をする練習を、毎日のように繰り返しました。
ハタチを機に
プロのベリーダンサーになることを決め、ダンスに専念するため大学進学は辞退。ちょうどレバノンから帰国したばかりのASYAさん(@asyabellydance)を知り、レッスンに通いながら自己流では分からなかったことを教えてもらったり、海外から来日するダンサーのワークショップに参加したりしながら学びを深めてきました。
「日本国籍を取得したい」
と考えるようになったのも、ちょうどこの頃です。
皆さんと同じように日本で暮らし、税金を納めてはいても、外国籍の私には選挙権もなければ公務員になる権利もありません。何より大きかったのが、イラン国籍の私のパスポートでは(ドバイ以外の)アラブ圏やヨーロッパ諸国への入国が許されなかったこと。「本場でベリーダンスを見たい/学びたい」「海外で自分の踊りが通用するか試してみたい」と思っても、例えばエジプト大使館の場合、観光ビザの取得すら叶わなかったんです。
でも、これは自分自身の力ではどうにもならないこと。
「ならば今できる精一杯のことをしよう」と考えを切り替えたら、逆に悔しさがバネとなった。国籍の問題はコンプレックスであったと同時に、私にとっては大きな<原動力>にもなっていたように思います。

●パフォーマンスだけでは生活できない!ベリーダンサーの現実
―いざプロ活動をはじめたら、
ホールのショーに出演しても
その報酬で衣装一着すら買うことができない…そんな現実に直面しました。
「プロのベリーダンサー」といっても
実際は平日は会社員として働いていたり、家族のサポートがあったり、インストラクター収入で生計をたてている方がほとんど。一般的な定義では<プロ=衣食住全てをその仕事で賄っている人>ですし、ベリーダンスについても当然そういうものだと思っていたので、当初はとても驚きました。
…先人の方々のお話を聞くと、
1990年代~2000年代には
パフォーマンス一本で生計をたてている<プロ>が数多くいたそう。
当時と比べて
今はけっして不景気ではないはず。
「ダンサーの数が増えた」ということもありますが、それ以上に社会全体からベリーダンス業界へお金が支払われなくなっているような感覚があります。
実際、企業や団体から<協賛>をとっているホールのショーはとても少ないし、レストランショーの単価も下がっていますよね。
パフォーマンスだけで生活が成り立たないのは、「プロのベリーダンサー」と名乗っている私たち自身が、社会全体におけるベリーダンスの<付加価値>を下げてしまっていることに原因があると思うんです。
●いま必要なのは、外部の人をも惹きつける<いいダンサー>
―このままでは日本のベリーダンス業界は終わってしまうのではと危惧しています。
いまSNSを見ていると、
「~なテクニック教えます」
「~で生徒が受賞しました」etc.
ダンサーというより
<カリスマ講師>を目指しているかのような投稿を数多く目にします。
パフォーマンスの対価が下がっている現在、たしかにショーの集客やレッスン収入のことを考えると、生徒数が多いに越したことはありません。でもいくら<いい先生>が増えても、限られたベリーダンス人口のなかで生徒が移動するだけ。それでは新しくベリーダンスをはじめる人は増えません!
必要なのは、
ベリーダンスをやっていない人がみても
「こんな風になりたい」
「もっと見たい!知りたい」
と惹きつけるような、スター性ある存在。
やっぱり何かを「はじめよう!」と思うのは、
例えば楽器なら<格好いいミュージシャン>だったり<グッとくる音楽>だったりに出会った時。いい先生やいいスクールは二の次であって、まずは初めて見る人のハートをグッと鷲掴みにしないことには、その先へは広がらないですよね。
大好きなベリーダンスと
素晴らしい中近東の音楽・カルチャーをもっといろんな人に知ってもらうためにも、
私はいい踊り子であり、
表現者でありたい。
まずは国内、
そしていずれは<日本人代表>として
世界へも発信できるよう、
「プロのベリーダンサー」として勝負していきたいと考えています。
―昨年から今年頭にかけて、週4クラス持っていた定期レッスンを初級クラスの1つだけに減らし、パフォーマンスとワークショップを主軸とした生活にシフト中です。
正直いま収入面は大変厳しく、生きていくのに必死! でも自分の信念を曲げてまで豊かな生活をしたいわけではないし、これも人生を変えるために必要な<試練>だと考えるようにしています。
クローズしたなかには、
中上級クラスもあります。私よりベリーダンス暦が長い人やプロ活動している人も通ってくれていたクラスをあえて閉じたのは、長く続けているうちにいつしかレッスンが刺激ではなく、私にとっても生徒にとってもルーティンになっていたことに気付いたから。自分自身<サービス業>としての講師収入に依存したくなかったこともあり、ここで一度リセットすることにしました。
もちろん突然見放したわけではなく、生徒たちには時間をかけてそう考えるに至った理由を説明し、主体性をもって学んでほしいと伝えました。その後も彼らとの信頼関係は続いているのが、何よりも嬉しいですね。

●思い通りにいかないからこそ…気付きやエネルギーを大切に!
―私は時おり衣装のアレンジ術を褒めていただくのですが、それは持っている衣装の数がすごく少ないから。実は日本国籍取得にかかる費用を捻出するため、衣装のほとんどを売ってしまったんです。
でも「また同じ衣装を着ている」とはみせたくないから、自宅にあるアイテムを組み合わせたり手作りしたり…そうしたら次第に楽しくなって、次々と新しいアイディアや着こなしが浮かんでくることも多いです。

―もし何でも手に入る人生だったら、
きっとこんな風に新しい気付きや楽しさを得ることはなかった。
思い通りにいないことも多いけれど、
そのおかげで出会えた人や気付きを大事に、そしてこれを原動力に、今後も「なりたい自分」に向けて真っすぐ進んでいきたいと思います。













