小松芳/Karima
https://www.graphova.jp/karima/
Almaz of Cairo
https://almazofcairo.com/free/almaz-of-cairo
今回は、1992年に日本人として最初にエジプトでダンサーとしてデビューした小松芳/Karima(カリーマ)と2012年から10年以上に渡りエジプトでダンサー&女優として活躍していたAlmaz of Cairo(アルマズオブカイロ)によるスペシャル対談。時代は違えど…二人の日本人ダンサーが体当たりで経験した「カイロのナイトクラブ」の、とびきり胡散臭くてクセになる魅力をぶっちゃけ語っていただきました!


※本コラムは2025年5月10日に行われたMARII(@marii_tokyo)主催のイベント『サタデーナイト エジプシャン・フィーバー』内のトークショーを再構成し直したものです
●床一面のチップに衝撃!初めてのナイトクラブ体験
はじめてエジプトのナイトクラブに
行ったのは今から40年近く前…
ベリーダンスをはじめる前に
エジプト&トルコを周遊するツアー旅行に参加したときのことです。
興味を持っていた
他のツアー客の方々をお誘いして、
ホテルのコンシェルジュに頼んで
予約を入れてもらいました。
―【Karima】
ダンサーについては
あまり記憶にありません。
ただ衝撃だったのは、
湾岸からの観客の一人が
突然ステージにあがってきて
20センチ近くある札束を
花咲かじじぃのように
ぶわーっと振りまきだしたこと!
当時(1980年代後半)は
1ポンドが250円の時代ですよ!!
(現在は2.9円/2025年6月時点)
床一面に山のように積まれたチップを
若いボーイが這いつくばるように
かき集めていたり、
その男の子をダンサーが
「邪魔!」とばかりに
雑に扱っていたり…
本当に「何じゃこりゃー!?」と思いました。
ダンサーはハイヒールを履いて
踊っているから、チップがあると
床がツルツル滑って危ないんですよね。
しかもそういうボーイは
チップを拾うふりをして、
ダンサーの足を触ってきたりする!
だから私も踊りながら
彼らを払いのけたりしていました。
夏場は<涼>をもとめて、
湾岸諸国からたくさんのVIPが
エジプトへやってきます。
気温が50度近くまであがる
湾岸諸国からしたら、
42度のエジプトの夏は
「涼しい」んです。
しかもエジプトに来れば、
ナイトクラブでお酒も飲めるし
ベリーダンスも観られる!
自国は宗教的な戒律が厳しく
娯楽が一切ないこともあって、
ダンサーが登場しただけで
チップシャワーがはじまったり…
正直、踊りを見るというよりは
ダンサーの<フォルム>を
目に焼き付けているような
感じがしました。
そんなこともあって、
胸もお尻もありえないほど大きい…
日本人の感覚からすると
バグってるようなサイズの
ダンサーのほうが、
エジプトのナイトクラブでは
客受けがいいんです。
―【Karima】
私の記憶では、
当時ナイトクラブの料金は
酒とつまみで
日本円で1人1万円くらい。
これは当時のエジプトからしたら
20万円近く…
銀座のクラブや京都の祇園で遊ぶのと同じような感覚だよね。
そもそも一般のエジプト人には
手の届く金額ではないし、
宗教的にも「良くないこと」
とされているので行きません。
ナイトクラブって、
エジプトにありながらも
一般社会からはちょっとかけ離れた場所だったんです。
●観るのも命がけ!? 想像の上をいく<見世物>的ステージ
―【Karima】
私がエジプトに滞在していた
1990年代前半は、
ゴールデンエラ後期のダンサーたちが
ぎりぎり現役として踊っていた時期。
ナグワ・フォワードや
フィフィ・アブドゥのステージは
何度も見に行きました。
―【Karima】
当時はミュージシャンも大人数で、
フィフィの楽団は
ミュージシャンが50人近くいたのでは。
急な角度のひな壇にぎっしりと、こぼれ落ちそうな勢いで並んでました。
そしてフィフィが
「ヤッラー」
と掛け声をかけると、
小さな女性たちが
舞台下からステージにわぁってよじ登ってきたり…
演出も今みたいに
観光客向けの爽やかなものではなく、
もっと「見世物小屋」的な怪しさがありましたね。
彼女たちは踊りもおそろしく上手!
ハンディキャップのある人たちを
しごいて踊らせているのだろうかと、
ステージの裏側を
勝手に想像して
私自身は複雑な気持ちになりましたが、
それでもショーそのものは凄かったです。
(画:Karima)
「お客さんにウケれば何でもいい」
という印象もあります。
今はベリーダンサーがショーで
低身長のダンサーを
使うことはなくなりました。
ただエジプトの芸能界には
今もタレントとして
低身長を<個性>として持ち味に
活躍している方もいて、
私も映画で共演したことがあります。
豊かとはいえないエジプトで
ハンディキャップを抱えて
生きていくのは大変なこと。
彼ら自身は、
完全に<ビジネス>として
割り切っている印象でしたね。
―【Karima】
有名ダンサーが出演する
豪華なショーだけでなく、
様々なナイトクラブに足を運びました。
VIPが家族連れでやってくる
ピラミッド通りの大きなナイトクラブ、
住宅地にひっそり佇む高級ナイトクラブetc.
時にはシーシャの煙が
もうもうとしている中、
客は全員アラブ人男性ということも…
そうした環境に
女性が一人で行くのは目立つから怖かったし、
そもそもお店が入れてくれないことも多かったですね。
いわば<命がけ>で観るベリーダンスショー!
もちろん外れも多いのですが、
いかついプロレスラー
みたいなダンサーやら、
おっさん声で歌う5、6歳の少年やら…
想像を超えたおかしなものに出会えるのが楽しみだったんです。
私はナイトクラブで
ホステス?として働いている女のコたち
(本当はいけないのですが)
の踊りを観るのが大好きでした!
エジプトのほか、
モロッコ、アルジェリアetc.
彼女たちはダンサーではないのですが、
ディスコタイムみたいな時間に
自分をアピールするために
時々ステージにあがったりするんです。
ヒップワークなんて、
それは素晴らしかったですよ。
小松先生はこういうコたちの踊り、
好きそうですよね!
―【Karima】
…大好き!!
ナイトクラブにいる
ちょっとヤバそうなコたちって
なぜか踊りが上手いコが多いよね。
習ったり教えてもらったりする
ベリーダンスとは
また違うエッセンスがあって、
私も彼女たちの踊りを観て学ぶことは多かったですね。
●エジプトならでは!ナイトクラブのチップ文化
―【Karima】
客にチップを巻かせるのが
やたら得意なダンサーもいましたね。
私は一番早い時間帯
(24時頃)に踊っていたから
まだ景気よくチップが巻かれる
時間帯ではなかったのだけど、
私の次に踊っていたダンサー「アモーラ」がまさにソレ!
踊りはそんなに上手くないのに
<チップを持ってそうな人>
を見つけるのがうまいという感じでしたね。
客のなかには、
チップをまくサクラもいましたよ。
新規のお客さんが恥をかかないよう、
クラブでどうふるまうか
=チップを巻くタイミングを教えるために
雇われているようでした。
チップはナイトクラブの大きな収入源。
歌手もそれが分かっているから、
歌いながら、わざとテーブル同士で
チップの応酬が行われるように
けしかけたりするんです。
演奏がなかなか始まらないので、
ダンサーはシミーしながら
その応酬を盛り上げてみたり…
チップ合戦は
楽しいことは楽しいのだけど、
私は内心
「早く踊りたいなぁ」
と思っていました。
●何がかかるか分からない!? リクエスト曲を即興で
私はベリーダンスをはじめて
1年目の時に
「ナイルグループ・フェスティバル」
に参加して、
エジプトならではの生演奏の
ライブ感や緊張感に夢中になりました。
ベリーダンスをはじめた19歳の頃から、
音楽はアラブ音楽しか聴いていません。
踊るときは
オリジナルのメージェンシーとか、
ウム・クルスームとか
アブデル・ハリームとか…
生演奏しかなかった時代の
オーソドックスな
クラッシックソングで踊っていました。
ミキシングのかかった現代の曲は
生演奏には向かないんです。

―【Karima】
私は自分のバンドを
持っていたわけではないから、
客からリクエストのあった曲を踊っていました。
選ぶ余地なんてなかったし
1時間のショーはほぼぶっつけ本番でしたね。
湾岸からのお客さまが多い夏場は
ひたすらハリージが流れていたり…
たしかにナイトクラブは
お客さんに合わせて
その場で曲がかかりますね。
でも先生は曲をご存じだから、
即興でも踊れるんだと思います。
―【Karima】
最初は曲も知らなかったよ(笑)。
プロダンサーデビューした
ニューヨークでは
アラブ人街で
カセットテープを50本くらい買って
聴きまくって暗記したりもしたけれど、
そもそも移民が多いから
ターキッシュや
グリークがかかることも多くて…
知らない曲がかかっても踊るしかない!
ずっとベリーダンサーはそういうものだと思ってました。
●短期滞在ではなく…私たちがエジプトに「住んだ」理由
今はすっかり人気の音楽が変わり
エジプトではマハラガンが
主流になってしまいましたが…
そもそも私がエジプトに
「住む」選択をしたのは、
エジプトの生演奏を味わうため。
最初は勉強の為に
日本とエジプトを
行き来していたのですが、
エジプトで学びたいことが
どんどん見つかって。
ベリーダンスの仕事が決まったら、
すぐに移住しました。
もう完全に<ノリ>ですね(笑)。
もしかしたらエジプトに呼ばれたのかも、
なーんて思うことも時々あります。
―【Karima】
たしかに…私も
「呼ばれた」
と感じることは多いかも。
会社を辞めて
ニューヨークへ語学留学したら
マンハッタンのナイトクラブで
プロデビューが決まり、
フォークロアを勉強するために
エジプトへ渡って
日本人向けパーティー等で踊っていたら
政府系四つ星ホテルのナイトクラブ
「マキシム」
のオーディションの話が舞い込み…
ベリーダンスとは何かと<ご縁>があるんですよねぇ。
ー【Karima】
ナイトクラブの
ちょっとヤバい話や
面白い話はまだまだたくさんあります。
この続きはまた、
次の機会にでもお話できたらと思います――。













