Mayu Kato
https://www.instagram.com/mayukaty
動き、曲、衣装、小道具…ダンサーの個性やセンスが一曲のなかに詰めこまれた<トライバルフュージョン>。国内外で活躍するMayu Kato(マユカトウ)に作品作りの背景を聞いたら、「永遠に自問自答」「反省しかない」etc.圧巻のパフォーマンスからは想像のつかない答えが返ってきました―。
●本番直前まで!自問自答の日々
―選曲、振付、衣装etc.についてはいつも本番ギリギリ…それこそステージに出る直前まで迷っています。
ー作品はステージ毎にイチから作りますが、
フュージョンには正解がないし、完成形は直前まで見えません。
音源も提出済みだし、衣装も一着しかもってきていない。もうそのままステージに出るしかない状態だと分かってはいても、「果たして合っているのか?」「これが誰かの感性に刺さるだろうか?」と自問自答は止められません。集中しているせいかステージにいる時間だけは何もかも忘れられるのですが、舞台袖に戻ってくるとまた「なんでもっと時間をかけなかったんだろう?」と反省がはじまります。
手ごたえはないし、「楽しい」と感じることは少ない。それでもなぜ踊り続けているかは「自分でもよく分からない」というのが正直なところです…。
●<無知>では踊れないから…広くフラットに情報収集!
ーこの踊りをはじめたのは、エキゾチックなものに興味があったから。カルチャーセンターでベリーダンスを体験し、まずその音楽に夢中になりました。その後<音の取り方>が自分に合っていると気付き、トライバルフュージョンを選びました。オリエンタルの煌びやかな衣装がちょっぴり苦手だったせいもありますね(笑)。
―今も普段よく聴いているのはアラブ音楽。
パフォーマンスする曲を選ぶ際も、どこかにアラブテイストの入ったサウンドを選曲することが多いです。時にはYoutubeでアーティスト個人が発表している音楽を使うことも。1曲気に入ったらフォローして、他の曲も聴いてみるようにしています。
インスピレーションの源はどこに潜んでいるか分からないので、自分の好みが反映されやすいインスタの<おススメ>も積極的に見ます。ダンスとは関係ないものもたくさん…とくに中近東・トルコ・中央アジアの美しい建物や風景などは数えきれないほど保存してありますね。
―合わせて、オフラインでのリアルな体験も大事にしています。
私は旅が好きなのですが、
海外に行くと現地のベリーダンススタジオでレッスンを受けるのも楽しみのひとつ。
モロッコでは
レイチェル・ブライスが大人気だったり…旅先で現地の人と話してみるとネット・ニュースで得ていた情報とは異なることも多く、驚いたり新たに発見することも多いんですよ。
―ベリーダンスの中でも
とくに自由度の高いフュージョンスタイル。何をどう踊るかは自身の判断に委ねられているからこそ、自分勝手な解釈や失礼にあたらないよう、無知では踊れないと感じます。
トライバルフュージョンにもルーツがありますし、<ベリーダンス>であるからには中近東地域への理解やリスペクトは欠かせません。文化芸術面はもちろん、個人的には今だ紛争が続くこのエリアの問題にも敏感でありたいと考えています。
●地元・神戸にトライバルフュージョンを根付かせたい!
―2021年から神戸で『PORT TRIBAL』というフェスティバルを開催しています。
これは尊敬するダンサー、オルガ・メオス(@olga_meos)に感化されてのこと。彼女はカザフスタンというベリーダンス辺境の地で15年以上に渡ってフェスティバルを開催し、<トライバル・フュージョン>というコミュニティを広めた、トライバル界の第一人者でもあります。
―目的は、地元・神戸のトライバルシーンを底上げすること!
とくに<アート>な面を押し上げるべく、毎年1つのテーマを決め、プロアマ問わずそれに沿ったステージ作品を作り披露する形にこだわっています。
「夏至」
「Shaman」
「NEST」
「DYNASTY」…
ひとつの言葉から想起するものは人それぞれだし、お客さまがそれを見て何を感じるかも自由。たとえコンセプトが被ったとしても、ステージでの仕上がりはまったく違うものになります。
なかなか海外まで行けない方にとっては、オンラインでしか見ることのできなかった国内外ゲストのパフォーマンスを<肉眼>で体験できる機会にもなっているんですよ。
―先日、レイチェル・ブライスが5年後の引退の可能性を示唆しました。オリエンタルと比べるとそもそもコミュニティは格段に小さいし、ダンサー同士で話していても「ジャンルの危機」という意識や責任感を持って活動している人は多いです。
こだわりを形にする作業は
けっして「楽しい」だけの作業ではありません。
でも背も小さくスタイルも一般的な私が世界で通用するようになるためにはただただ真面目に技術とアイディアとセンスを磨いていくしかないし、そうして作った作品が誰かの心を動かすことができたり、一緒に踊る仲間が増えたりしたら嬉しい。
これからも自問自答の日々は続きますが、一切の妥協なく自分なりの最適解を探していこうと思います。